研究科長からのメッセージ
法学研究科長 春日 勉
今、わたしたちをめぐる社会は大きく変化し続けています。インターネット環境の整備により、情報はよりスピーディーに拡散共有され、SNSなどを通じてコミュニケーションが交わされています。また、AIが人に代わって多くの役割を果たそうとしています。さらに、世界レベルでは、持続可能な社会を目指して環境問題への対応やあらゆる分野で人権への配慮が求められています。しかし、こうしたスローガンとは裏腹に、世界各地で紛争が発生し、世界情勢は混迷を深めています。国内に目を向ければ、同性婚や選択的夫婦別姓導入の可否等、既存の概念では解決し難い問題が浮き彫りになっています。
そこでみなさんに問いたいと思います。法を専門的に学ぶ意義とは何ですか。法の専門性というと、基礎的な知識を前提に高度で応用的な法の解釈・適用ができること、物事を多角的に捉え、いかなる状況にも柔軟に対応しうる力を養うことだと捉えられがちです。しかし、現実の社会は移ろい変わりゆく中で、法律の解釈や法の見直しも柔軟でなければなりません。そのとき、専門家が何を礎として仕事をするのか、社会が専門家に期待する役割とは何でしょうか。それは、どの時代でも「人権」に対する深い敬意だと思います。特に、「少数者の人権」の尊重です。これこそが法的な論争を解決するための不可欠な視点といえるでしょう。
みなさんの研究生活が充実したものになることを祈念いたします。