第16回文化相互理解シンポジウム「ダイバーシティ&インクルージョン 新たなリーダーとは。米国ポートランド編」(法学部主催)が10月25日、ポートアイランドキャンパスで開催され、学生ら92人が参加。PDX COORDINATOR, LLC代表(国際プロジェクトコンサルタント&企画視察コーディネーションを行う、オレゴン州女性ビジネス認定企業社)の山本彌生氏(日本女性として唯一、オレゴン州知事室選出アジア・パシフィックリーダー等を務める)が講演しました。同氏は、「全米で最も住んでみたいまち」に選ばれたオレゴン州ポートランドで起きていることについて、また現在提唱されている新たなリーダー像について、「プレイスブランディング」「ダイバーシティ(多様性)」「インクルージョン(包摂性)」「π(パイ)型人材」「COLLECTIVE GENIUS」をキーワードに、これからの時代に、ひとりひとりが異なる存在として受け入れられ、社会を構成するにあたっての大切な要素は何なのかについて、楽しくわかりやすく話され、学生は熱心に耳を傾けていました。
山本氏はまず、「なぜポートランド?~ポートランドブームとは?」について、WELLビル(健康と環境に配慮したビル)に代表される街づくり、移動が楽なコンパクトシティ、都市成長境界線(Urban Growth Boundary)により農地を守り、地産地消を実現していること、という3点をあげました。そして、「現在のポートランド課題&プレイスブランディング」について、人口流入により、ジェントリフィケーション問題、物価や不動産の価格上昇問題などが起きたと述べました。もともと農工業を主とする保守的志向の白人が多いポートランドには近年クリエイティブクラス層が流入し、課題解決のために「場所」のブランディングが行われています。また、10年前から持続可能とダイバーシティ&インクルージョンを官民で推し進めていると述べました。なお、米国においてダイバーシティは、人種、性別、社会的弱者を主に意味します。
次に、山本氏は、「ダイバーシティって?インクルージョンって?」について、考え得る改善策について述べました。日本においては、年功序列および非柔軟性がインクルージョンの弊害になっています。山本氏の提案は3点あります。第一に、物事を一方向から見ず、多方面(ダイバース)から見ることです。そのためには観察力、柔軟性、そして表面だけを見ずに歴史的・文化的背景を考えるという知的好奇心が必要です。米国では、複数の専門分野に精通していて(たて軸)、それを複合的につなぐ視野の広さをもつ(よこ軸)「π型人材」がこれからのグルーバル化の時代に必要であるといわれていると述べました。第二に、イノベーション社会の最大の鍵は、インプットとアウトプットを繰り返し、トライアル&エラーにより改善していくことです。第三に、「COLLECTIVE GENIUS」と呼ばれる、「協働」という名のリーダーシップスタイルです。これはハーバード大学のリンダ・ヒル教授の提案のひとつであり、日本の一億総活躍社会の政策の元となった考え方です。現在は、すべてのことを一人のリーダーがなしとげる時代ではなく、各自が各々の得意分野のリーダーであるという認識をもつことでイノベーションを起こす時代です。具体的には、特別な才能や能力は必要なく、自分のいいところがリーダーの要素になるので、それをトライアル&エラーを繰り返す自己トレーニングによって伸ばすことが社会の宝になると講じて、講演会をしめくくりました。