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第28回文化相互理解シンポジウムを開催しました

2025/11/19

弁護士の駒井知絵氏を講師として招き、11月17日に、第28回文化相互理解シンポジウム「仮放免の子どもたち『仮放免の子どもたち絵画作文展(11月10日~11月17日)』開催にあたって」を開催しました。また、討論者としてアムネスティー日本 多文化共生チームの野尻賢司氏が参加しました。

「仮放免」とは、退去強制令書等により入管施設に収容されている外国人を、健康上の理由などから一時的に収容を停止し、身柄の拘束を解く制度です。つまり親が外国籍で在留資格がない場合、その子どもたちは日本で生まれ育っても、原則在留資格を得られず、資格が得られても親とともに失うこともあります。具体的には、仕事はできず、保険証も持てず、生活保護も受けられず、移動も制限されます。

そこで、このような状況にある仮放免の子どもたちを支援してきた駒井氏らが中心となり、子どもたちの現在の素直な気持ちを絵画や作文を通じて表現してもらい多くの人々にこうした子どもたちが置かれた状況を理解してもらいたいとして『仮放免の子どもたち絵画作文展』を企画しました。

講演で駒井氏は、その子どもたちが心をこめて描いた作品や作文を紹介しました。その中で自分が仮放免という状況であるということを初めて認識したときの子どもたちの様子や、生活が苦しく生活必需品さえ賄えない厳しい状況、病気に罹って病院で治療を受けて数十万の請求を受けた例などをあげて子どもたちの窮状を訴えました。また、もし母国へ強制送還されれば、言葉も知らず、生活の基盤もない、教育も日本で受けていてそもそも適合できない子どもたちがどうして生きていけるでしょうと問題提起しました。

そのうえで、母国で政治的な迫害を受けるなどして難民申請を行う外国籍の人々、そして、日本の政府がそのような人々に対してどのような政策をとっているのかについて言及しました。具体的には、日本では2024年に1万2000件超提出された難民申請に対して、認定を受けた者はおよそ2.3%足らずであり、カナダ(70%)、アメリカ(57%)、イギリス(42%)と比べると先進国の中では極端に認定率が低いと指摘しました。

こうした中で、2023年8月に「送還忌避者のうち本邦で出生した子どもの在留特別許可に関する対応方針について」という出入国在留管理庁からの通達がだされたことを紹介しました。これは、日本で出生して日本の学校教育を受け、引き続き日本で生活していくことを希望している子どもとその家族に在留特別許可を与える制度です。これにより仮放免の子どもたちの中には救われる者がいる一方で救済措置の対象とならない子どももおり、また、救済されても「在留特別許可」という資格では将来が極めて不安定であると説明しました。

一方、討論者の野尻氏は、学生の社会活動への参加について、会場でアンケートをとり、参加者で共有しました。

学生からは、「日本の社会で暮らす外国人に対する私たちの眼差しが問われているのだと思いました」「外国人は私たちの社会には欠かせない存在であり、相手のことをもっと理解し互いに譲り合わなければならない」など外国人に寄り添おうとする感想が多く見られました。

  講演をする駒井氏
講演する駒井氏
  アンケート結果について説明する野尻氏
アンケート結果について説明する野尻氏
  講演に耳を傾ける参加者
講演を聴く参加者
  絵画作文展の様子
D号館コミュニケーションモールで開催された絵画作文展